++春++

 春の暖かい日差しの中、うす暗い宿屋の一室。

   ふぅ

 その部屋の借主は一息つきました。

 あと少しで解読の終わる本を眺めながら・

 「いつの間に昼になってたんだ」

   読みはじめたのは真夜中だったはずだが・・

 「まぁいい、あともぅ一息だ」

 

 

 とたとたとた

 「ゼルガディスさんったら、また徹夜しちゃったのかしら」

 肩までの黒髪をゆらしながらアメリアがとたとたと歩いていく。

   リナさんもガウリィさんも出かけちゃって・つまらないです〜

 『私マジックショップに用があるから』

 『じゃぁアメリア、ゼルのことたのんだぞ

  あいつアメリアが止めないと無理するからな〜』

 そんな二人の言葉を思い浮かべ、一人顔が緩んでいく。

  私が止めなきゃ・って、私ちゃんと役にたってるんでしょうか・・

 

  しかもゼルガディスさんの!

 

 きゃぁ〜♪ 

 と顔をさらに緩ませつつ、

 仲間の思った通り無理をしているであろうゼルガディスの部屋の前で止まる。

  私は二人に頼まれたから来たのであって、別にその・ゼルガディスさんに会いたいな〜・・

  なんて思って来てる訳じゃないんです!ほら、あまり無理してるとイザ正義をっ!!

  な時とか困るじゃないですか!すなわちコレは正義なのです!!

 うんうん、と自分に言い聞かせるアメリア、

 いつもなら邪魔にならない様に、とこんな時は押しかけたりしないようにしているのです。

 

  二人に頼まれて、少し様子を見るだけです。

 

 再度心の中で繰り返し、ドアノブに手をかける

 「ゼルガディスさ〜ん?入りますよ〜〜」

   シーン・・・あれ?いないのかな・

 「おじゃましまーす・・・・はぅっ」

 入ったとたん目に飛び込んできたのは

  ゼルガディスさんの寝顔!?

 白いシーツの上で魔道書片手に寝入ってしまっています。

 「すす・すいませんっ・寝てると思わなくてっ」

 あわあわ「ごめんなさーい」と大慌ての姫君。

 相手は寝ているのだから別に謝らなくてもいいのですが、

 そんな事を言いながらも魔剣士さんの寝顔にクギづけです(笑)

   ・・はぅ〜・男の方なのにキレイですね、女装も似合うはずです。

 魔剣士さんが聞いていれば激怒決定な事を思いながら、

 ベットの端にちょこんと座って

   えへへ〜、役得です♪

 ちょっとばかりリナ達に感謝しつつ

 春の日差しに姫君も睡魔に誘われるのでした。

 

 

 

  ふと、甘い香りが鼻腔をくすぐり深い眠りから現実へと誘われる。

 腕に柔らかな重みを感じつつ

  ――そういえば・本をよんでいたハズなんだが・・

        寝てしまってたのか・・・―――――

 まだ覚めない現実の中でゼルガディスはうつらうつら思考を働かせ。

 右腕の重みに疑問をかんじて、あいている左手でそれに触れてみた。

 その手のなかではゆたかな黒髪がサラサラと音楽を奏でた

   あぁ、アメリアか・・

 いつの間にかアメリアがゼルガディスの腕の中で幸せそうに眠って・・て???

   ぴしぃ・・・

   ・・・・・・・・

 「ア・・アメリア!???」

   ななな・何でアメリアがオレのう・腕枕で寝てるんだ!?

 ぱくぱくと開いた口がふさがらない残酷な(おちゃめな?)魔剣士さん。

 おもわず「何かしたか!?」と忙しく考えをめぐらせる。

 何かやましい事で心あたりでもあるのでしょうか?(笑)

   ・・落ち着け、たぶんこいつの事だ

   様子を見に来たのはいいが、そのまま寝てしまったんだろう。

 

  ―――なんでこんな所で寝るんだ・・―――

 

   はぁぁ・・・・(ため息)

 「うみゅ・・ゼル・ガディスさん・・」

 耳元をくすぐる幸せそうな姫君の声

 無防備なその寝顔につられて

 「アメリア」

 あらためてその髪に触れてみる。

   サラサラ・・

 自分のものとは違う

 そのやわらかな髪に目を細めて。

 「まぁ、たまにはゆっくりするのもいいか」

 と、お姫さまの額に甘いキスを落として

 仲間の二人が来ませんようにと思うのでした。

 

 

 


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